ブルバキの位相についてのメモ

大学二年生の夏休みはずっとブルバキの位相の本を読んでいたような記憶がある.Springer から出てた “General Toplogy Chapters 1-4” がそれ.いま思えば別にこれが位相空間を学ぶベストの本ではないと思うが,20歳の頃に悩みながら読んだ記憶が美化されてしまうせいもあってか不思議と嫌いになれず,いまだに手元にこの本が置いてある.

上で《嫌いになれない》と書いた.この本は多くの位相空間の教科書とはなんとなく書き方が違う.なにせ,肝心の位相空間の定義の仕方からして少し変わっている.ややクセがあるのは確かであり,人前で《この本が好き》というのは少し気恥ずかしい.どう書けば《変わってる》感じが伝わるかわからないが,ここでは二点

1.開集合系の定義の仕方
2.フィルターへの偏愛

に絞って説明する.

■1.開集合系の定義の仕方
ブルバキでは集合{X}上の位相構造{T}が次のよう性質を満たすものとして定義されている:
(O1) {T}の集合の合併は{T}に属する.
(O2) {T}の集合の有限交差は{T}に属する.

多くの教科書では{X,\varnothing \in T}も公理になっている.しかし,実はこれは(O1)(O2)から次のように導ける:

・空集合が{T}に属すること:{T}の空部分集合を考える.(O1)により{\bigcup \varnothing \in T}となることから成立.

{X}{T}に属すること:{T}の空部分集合を考える.(O2)により{\bigcap \varnothing \in T}となることから成立.

上の議論には納得が行くだろうか.空集合が{T}に属することの議論には問題がないが,{X}{T}に属することの議論はどうだろうか.そもそも{\bigcap \varnothing}の指示内容は何だろうか——それが存在するとして,それは果たして集合だろうか?

(念のために付言すれば,通常の集合論では{\bigcap \varnothing}を考えない.たとえばキューネン『キューネン数学基礎論講義』p.32とそこにおける議論を見よ).

■2.フィルターへの偏愛
位相空間はフィルターを用いて定義することもできる.この《フィルター》というのはブール代数などでも研究されるフィルターと大体同じ概念である.(Xの冪集合をブール代数とみなしたときの「ブール代数のフィルター」はこの本での「フィルター」になっている).フィルターを通して眺めると連続性の議論がやや代数的な雰囲気になる.とはいえ,この本で扱われている範囲ではあまりフィルターを持ち出して議論する旨味はそんなに感じられない.読んで理解するのが結構大変なわりにはどこへもたどり着けないようなもやもやした気持ちが残る.

■3.おまけ:公理(O3)
先述したように,ブルバキの位相空間の公理は(O1)(O2)で尽くされているのだが,しばらく読み進めるとChap 1 sec8.4 Regular Space Prop.11 に(O3)が登場している.なぜこの公理が(O3)と呼ばれるのにふさわしいのか,などは全く説明されていない.やはりこの本はクセが強い.

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